やす先輩こんにちは。転職を7回以上繰り返し、キャリアアップして成り上がってきた転職上級者です。今回は、クビにした社員の共通点と辞めさせる方法について解説していきますね。
「正直、クビにしたい」と感じる社員がいる。
しかし、その“違和感”の裏には、明確な共通点と構造的な問題があります。
・注意しても改善しない
・やる気がなく、チームの士気を下げる
・権利ばかり主張し、責任を取らない
こうした社員は、放置すれば組織全体の成果を腐らせます。
一方で、安易に「辞めさせたい」と感情的に動くと、パワハラや不当解雇のリスクにもつながりかねません。
この記事では、「クビにしたい社員 共通点」を軸に、
問題社員の心理と行動パターン、リーダーとしての対処法、法的に安全な進め方を実例交えて解説します。
「辞めさせる」ではなく、「組織を守る」視点で、正しい線引きを学びましょう。
もしあなたが「社員を辞めさせたい」と感じているのが、
「人を見る目に自信がない」「判断が正しいのか不安」だからなら、
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クビにしたい社員の共通点とは?
「やる気のない社員」「問題社員」と呼ばれる人には、行動と心理の“型”があります。放置すると業務の遅延だけでなく、周囲の士気・信頼・採用力まで侵食します。中でも厄介なのは「やる気ないけど仕事はできる」タイプ。数値は出すのに文化を壊し、チームの総合効率を落とします。ここでは見極めと対処の前提を整理します。
問題社員の特徴と心理背景
共通する行動
- 期限直前まで沈黙し、遅延を外部要因で正当化する
- 最小限しか共有せず、指摘されると「聞いていない」で遮る
- 役割の線引きを極端に狭く解釈し、越境協力を拒む
- 成果の功は自分、失敗の責は周囲という語り口に偏る
- 反省は言うが具体策がなく、同型ミスを繰り返す
心理背景の“よくある3層”
- 表層:評価不安からの防衛(責任回避・言い訳化)
- 中層:職務不一致(強みと業務のズレ、成功体験の古さ)
- 深層:関係不信(指摘=否定の記憶で学習が止まる)
見極めの初動
- 行動事実と影響を時系列で記録(主観語を排除)
- 期待役割の再提示と合意形成(何を・いつまでに・どの水準で)
- 1on1で「障害は知識か仕組みか意欲か」を切り分ける



人格の問題と決めつける前に“行動の型”で見て、合意した期待との差分で語ろう。そこから先が、本当に問題かどうかの分かれ目。
やる気のない社員が職場に与える悪影響
連鎖するダメージ
- 業務面:引継ぎ負債、レビュー時間の増加、品質のばらつき
- 人間関係:依頼の回避、陰口の増加、心理的安全性の低下
- 雰囲気:基準の下方硬直化「これでいい」が蔓延、挑戦の抑制
可視化のための指標例
- 期内の再作業率、未報連相件数、期限前24時間の突発依頼数
- チームアンケートの「助けてもらえる感」「指摘しやすさ」
- 朝会での発言者偏在率、イネーブラーの燃え尽き兆候
介入の基本線
- 期待役割をKGI-KPIと“やらないこと”まで紙で再合意
- 進捗は「現状・阻害要因・次の一手」セットで日次共有
- 行動改善は2週間スプリントで検証、変化がなければ配置転換の検討へ



空気は数値で変えよう。『最近しんどいよね』より、再作業率や未報連相件数が語ってくれる。
能力はあるのにやる気がない社員の末路
“一見優秀”がもたらす落とし穴
- 個人の点成果は高いが、連携コストが高くチーム総量はマイナス
- ルール軽視が若手の模倣を招き、文化が音を立てて崩れる
- 属人化による「その人がいないと回らない」状態が慢性化
上手な線引き
- 「自由=裁量」「逸脱=例外」の境界を文書化し、例外承認の条件を明確化
- 個人OKRに「コラボ指標」(レビュー数、支援件数、ナレッジ投稿)を入れる
- 成果の再現性を評価軸に追加し、個人芸から仕組み化へ誘導
終着点の選択肢
- 役割設計の見直しと期待再定義で“良い個人商店”から“良いリーダー”へ
- それでも文化破壊が続くなら、配置転換または出口の合意



数字だけ強い“個の英雄”は、放置すると組織の敵になる。評価軸に“再現性と貢献”を足すだけで、景色が変わるよ。
辞めてほしい人ほど辞めない理由
よくある構造
- 仕事の可視化が甘く、本人が“必要な人”だと誤認している
- 罰と賞の設計が逆転し、周囲が尻拭いするほど当人が楽になる
- 上司が記録を残しておらず、人事判断の材料がない
抜け出す設計
- タスクをWBS化し、誰が見ても回せる手順と期限を残す(属人化解体)
- 成果配分を再設計。支援・連携の指標も評価に反映
- 面談記録・改善計画・合意文書を整え、2〜4週間ごとにレビュー
- 期待不一致が続くなら、役割変更か外への選択肢を誠実に提示
対話の型(尊厳を守りつつ前へ進める)
- 「現状の期待と実際に差がある。強みが活きる役割を一緒に考えたい」
- 「次の2週間で確認したい具体行動は三つ。到達したら役割を広げる、難しければ配置を変える」



“辞めない人”を嘆く前に、仕組みが“辞めなくて済む構造”になっていないか点検しよう。記録と再設計が鍵。
「問題社員」を追い込む前にすべきこと
「問題社員を追い込む」「やる気のない社員をクビにする」
そう検索する上司は少なくありません。
しかし、感情的な判断で動けばパワハラ・不当解雇・職場風土の悪化という“二次災害”を引き起こします。
本来の目的は「辞めさせること」ではなく、“組織に合わない構造を是正すること”です。
つまり、個人の排除ではなく、「職務適正の再確認と再設計」が正しいプロセスです。
やる気のない社員を追い込むリスクと法的境界線
上司が「もう限界だ」と思っても、安易にプレッシャーをかけるのは極めて危険です。
「退職を勧める」「仕事を与えない」「居場所をなくす」といった行為は、
本人が録音やメールを証拠化すれば“退職強要”や“パワハラ”として訴えられます。
特に注意すべき行為
- 「他の人も迷惑してる」など、主語を“みんな”にする圧力型発言
- 評価面談で「このままだとクビになる」と脅す表現
- 明確な職務指導なしで異動・席替え・業務外しを行う
法的には、「改善の機会を与えたかどうか」が最重要。
最低でも2〜3回の具体的な指導・改善面談を経ずに退職を促すと、会社側の不当と見なされやすくなります。
リスクを避けるためのキーワードは「記録・客観性・一貫性」です。



“追い込む”の一歩手前に、上司自身が落ちる落とし穴がある。
感情ではなく、“改善の記録”があなたを守ってくれる盾になる。
能力不足を伝える正しい方法とタイミング
「能力不足です」と直球で伝えるのは危険です。
多くの上司が勘違いしがちなのは、“能力”という言葉が人格否定に聞こえる点です。
伝え方の原則は「過去ではなく、行動の未来を軸に話す」こと。
NG例
「あなたの能力ではこの仕事は難しい」
→ 個人攻撃・人格否定と受け取られる
OK例
「この業務では成果を出すために○○のスキルが必要。現状は△△の差があるけれど、
次の1ヶ月で一緒に改善策を立ててみよう」
また、タイミングも重要です。
忙しい期末や会議直前に伝えると、心理的ダメージが倍増します。
面談は“週の前半・午前中・1対1の静かな場”で設定するのがベスト。



“伝える勇気”より、“伝え方の設計”が大事。
相手の心が壊れない伝え方をすれば、上司も守られる。
記録を残すことが上司を守る唯一の防衛策
多くの管理職が軽視しがちなポイントが、「記録化」です。
しかし、トラブル時にあなたを守るのは“正論”ではなく“証拠”です。
記録に残すべき内容
- 面談日と議事メモ(発言要約・改善合意点)
- 指導内容のメール送信(「次回までに行う行動」を明文化)
- 改善進捗のチェックリスト(期限・達成度・上司コメント)
- 第三者確認の署名(人事・上長の立会いがあればより強力)
これらを3サイクル(6〜8週間)運用しても変化がない場合、
“合理的な指導努力を尽くした”とみなされ、正当な判断として扱われます。
また、記録を本人にも共有することで、「言った・言わない」トラブルも防止可能。
つまり、記録は上司のためだけでなく、部下の信頼保全にもつながります。



記録は“攻撃材料”じゃない、“信頼の設計書”。
言葉より紙の方が冷静さを守ってくれる。
「辞めさせたい人に対する態度」の正解とは?
「辞めさせたい」と思う瞬間は、誰にでもあります。
しかし、その感情を表に出した瞬間から、チームの信頼は一気に冷えます。
理想は、“公平な態度のまま線を引く”こと。
上司のNG態度
- 雑談や飲み会で「あの人には困ってる」と周囲に漏らす
- 叱責口調で「もう限界だ」と言う
- 「やる気あるの?」と感情をぶつける
正しい対応の型
- 感情ではなく事実で語る:「この2週間で○件のミスが続いている」
- 解決策を提示する:「一緒に改善方法を考えよう」
- 期限を区切る:「次の1on1までにAを確認しよう」
- 成果が出なければ配置転換や外の選択肢も検討する
上司としてやるべきは、「辞めさせる」ことではなく、
“判断基準を共有したうえで、本人に選択してもらうこと”です。



“辞めさせたい”と感じたら、一度深呼吸。
追い出すより、正しい線引きと記録で静かに決着をつけよう。
能力不足・やる気なし社員の正しい対処法
最初にやることは、“人”を責めるのではなく「できない理由」を構造で分解することです。
- 環境:役割の曖昧さ、過剰な業務量、ツール未整備、教育不足
- スキル:基礎知識・業界理解・手順理解・時間管理
- 意欲:目標の腹落ち、承認実感、心理的安全性、健康状態
この3層を切り分けると、指導しても変わらないのは“本人要因”か“職場の設計要因”かが見えてきます。
その上で、改善サイクル(2〜4週間×2〜3回)→適正配置転換→なお難しければ自主的な退職の検討という順で、法的にも情理的にも安全な進め方になります。
能力不足の見極め方と伝え方のコツ
見極めの基本
- 事実×時系列で記録(主観語を排除):例)「4/10・4/17の見積りで誤差30%超。根拠説明が不十分」
- 期待の再提示:KPI/KGI、品質基準、締切、レビュー回数、「やらないこと」まで文書化
- ギャップの特定:環境・スキル・意欲のどこが阻害要因か、本人と合意
伝え方の原則(人格でなく行動差分に言及/未来志向)
- NG:「あなたは能力不足です」
- OK:「この業務は〇〇の基準が必要。現状は△△が不足。次の2週間で××の練習を一緒にやろう」
具体テンプレ(面談冒頭の3文)
- 事実:「直近2週間で納期遅延が2件、レビュー差し戻しが3件ありました」
- 期待:「この役割では“見積り誤差10%以内、レビュー差し戻し週0〜1件”が基準です」
- 提案:「次の2週間は、見積り根拠の分解を一緒に練習し、提出前チェックリストで精度を上げましょう」



“能力不足”は烙印じゃない。差分を見える化→一緒に埋めるが、最速で公平な道。
やる気のない社員を動かす「質問型フィードバック」
説教より自分で気づかせる方が動きます。質問の順番が鍵です。
S→O→A→R(Situation/Obstacle/Action/Resource)の順で聞くと、当人の行動計画に落ちます。
質問例セット
- S(状況):「いまの業務で一番詰まっている場面はどこ?」
- O(障害):「何が障害?情報?手順?時間?それとも優先順位?」
- A(行動):「明日から変えられる一手は?」
- R(資源):「私やチームに頼れるリソースは何?誰のレビューが早い?」
- フォロー:「2日後の朝会で進捗10秒報告しよう」
可視化の小ワザ
- 1枚の“次の一手ボード”(阻害要因/次の一手/期限/支援者)をMiroやNotionで共有



“なぜやらない”より“どうすればできる”を一緒に設計。質問は相手の自走エンジンになる。
自主退職を促す安全なステップ
前提:追い込む圧はNG。法的リスク回避のため、改善機会の提供と記録が先です。
ステップ設計(目安:6〜8週間)
- 改善計画(PIP)合意:目標・指標・期限・支援内容を文書化(双方署名)
- 週次レビュー:達成度を可視化。できた点→不足点→次の一手の順に確認
- 中間判断(2〜4週):配置転換の選択肢や教育延長の可否を提示
- 最終判断:達成が難しい場合、尊厳を守る言葉で“選択肢”を提示(退職の強要はしない)
スクリプト例(※強要禁止/選択肢提示)
- 「現状の基準到達は難しく、配置転換でも改善が見込めない見立てです。選べる選択肢を3つ用意しました。①教育期間を2週間延長 ②社内の別ロールを選考 ③転職活動支援を行い円満退職を調整。あなたの希望を尊重して決めましょう」
- 「退職を勧奨する意図はありません。あなたの意向を第一に、最も納得感のある道を一緒に選びたいです」
退職面談の“地雷回避”
- ×「このままだとクビ」/×「迷惑」/×「皆の総意」
- ○「役割基準とのギャップ」○「改善努力の履歴」○「選択肢と支援の提示」



“辞めさせる”でなく“選べる状態を整える”。尊厳を守ると、最後まで関係が壊れない。
辞めさせ屋に頼るリスクと現実(辞めさせ屋 とは/違法性)
辞めさせ屋とは:外部業者が“退職に追い込む”行為を請け負うもの。手口は接触・監視・圧力・社内扇動など、ハラスメントや違法領域に踏み込みやすい。
- 法的・倫理的リスク:名誉毀損、脅迫、プライバシー侵害、会社の信用毀損。発覚すれば企業側が致命傷。
- 実務的リスク:録音・記録化で逆に会社不利/士気崩壊/優秀層が離脱。
正しい代替
- 社内:人事・産業医・EAP・法務と連携、PIPと配置転換、労務相談のルート整備
- 社外:キャリア相談/転職支援の紹介(強要NG)、記録に基づく労務弁護士への事前相談



“近道”に見える裏道は、たいてい崖。正道(記録・合意・配置・支援)が最終的に一番早い。
実務チェックリスト(保存版)
- できない理由を「環境/スキル/意欲」で切り分けた
- 期待基準・期限・支援内容を文書化し合意した
- 週次レビューで進捗・次の一手を可視化した
- 2〜4週で配置転換含む選択肢を提示した
- 6〜8週で最終判断。強要せず、尊厳を守る言葉で選択肢を提示
- 記録(議事・メール・チェックリスト)を双方共有した
やす先輩の体験談:チームを乱す“やる気のない社員”への対応記録
当時の状況:成果ゼロなのに自己評価が高い部下
当時、僕は5人チームのマネージャーでした。
その中にひとり、「やる気のない社員」としか言いようのない部下がいました。
期限は守らず、指摘しても「やろうと思ってました」と言い訳。
成果が出ていないのに、自己評価だけはやけに高い。
さらに厄介だったのは、彼の“態度”です。
会議では腕を組んで他人の意見を小馬鹿にし、
雑談では「この会社は効率悪い」「上が無能」などと平気で口にする。
その空気はチーム全体に伝染し、士気が目に見えて下がりました。



“1人のやる気のなさ”が、想像以上にチームを腐らせる。
放置した分だけ、空気は静かに濁っていくんだ。
感じたこと:イライラと無力感で冷静さを失った
最初のうちは「成長過程だ」と思ってフォローしていました。
しかし、注意しても変わらない。報告も曖昧。
他のメンバーが夜遅くまで頑張っている横で、彼だけ定時退社。
次第に、僕の中に“怒り”が溜まっていきました。
ある日、会議中に彼が「それ、意味あります?」と軽く笑った瞬間、
僕は感情のブレーキを失い、「意味がないと思うなら出なくていい」と声を荒げてしまった。
その後、チームの空気はさらに悪化。
彼は翌日から露骨に距離を取り、周囲も僕に気を遣うようになった。
リーダーとして冷静さを失ったことに、深い自己嫌悪を覚えました。



怒りは一瞬で信頼を壊す。
どんなに正しくても、“怒った側が負ける”のがマネジメントの現実。
行動:対話を「責める」から「気づかせる」に変えた
感情的な指導では何も変わらないと悟り、僕はスタンスを変えました。
次の1on1では叱るのではなく、質問型の対話に徹したのです。
「最近の仕事で、一番達成感を感じた瞬間は?」
「このチームで、あなたが一番貢献できると思う場面は?」
最初は不機嫌そうにしていましたが、沈黙のあと、彼がぽつりとつぶやいた。
「正直、今の仕事が自分の得意分野じゃない気がします」
それが突破口でした。
“やる気がない”のではなく、“方向性がズレていた”だけだったのです。
彼にとってはマーケティングではなく、データ分析のほうが得意分野。
配置転換を提案すると、表情が少しだけ変わりました。



“やる気がない”の裏には、ミスマッチがある。
責めるより、“ズレの解像度”を上げることが先決だ。
結果:本人の“方向性のズレ”に気づき、自主退職へ
数週間後、彼は自ら「別の業界でデータ分析をやりたい」と退職を申し出ました。
正直、驚きました。
引き止めるか迷いましたが、“自分の意思で動いた”ことが何よりの成長だと感じ、快く送り出しました。
退職後、彼から「最後の1on1で救われた」とメールが届いたとき、
初めて“辞めさせる”ことと“見送る”ことの違いを理解しました。



辞めさせるより、納得して“卒業させる”。
その方が、上司にも部下にも後悔が残らない。
学び:辞めさせるより、“整理して送り出す”のが上司の仕事
この経験で痛感したのは、マネージャーの役割は“裁く”ことではなく“整理する”ことだということ。
どんなに手を尽くしても、方向性の違う人は出てくる。
大事なのは、「この人は悪い」「やる気がない」と切り捨てるのではなく、
“なぜそうなったのか”を整理し、納得の出口をつくることです。
結果的に、彼が抜けた後、チームは驚くほど落ち着きました。
空気が澄み、残ったメンバーの意欲も回復。
「去る勇気」と「送り出す覚悟」、どちらも上司に求められる資質です。



“去る人”を悪者にしない。それが成熟したチームの証。
上司は、“残す”よりも“見送る”勇気を持とう。
「辞めさせたい社員」を正しく処理するための手順
「もう限界だ」「辞めてもらうしかない」そう感じた瞬間、上司の頭に浮かぶのは“処理”の手順でしょう。
しかし、ここで感情や独断が入ると、一気に「不当解雇」リスクへ転落します。
安全かつ誠実に進めるには、事実の整理→改善機会→記録→組織判断→退職合意の順序が不可欠です。
この章では、「辞めさせたい」と感じたあとにやってはいけない行動/やるべき行動を、実務レベルで解説します。
まず“能力と態度”を明確に切り分ける
トラブルの多くは、「能力が足りない」問題と「態度が悪い」問題を混同するところから始まります。
両者は、改善アプローチも記録内容も異なります。
能力の問題とは
- 指示の理解・遂行が遅い
- ミスが多い/知識不足
- 作業手順を習得できていない
→ 対応策:教育・トレーニング・マニュアル整備・OJTの強化
態度の問題とは
- 指示に従わない・遅延報告
- 他者批判・反抗的発言
- チーム協調を乱す行動
→ 対応策:行動改善指導・懲戒ルール・面談記録
能力は育成で補えるが、態度は価値観の問題。
この区分を誤ると、「教えても直らないのか」「そもそもやる気がないのか」が曖昧になり、判断がブレます。



“できない”と“やらない”を混ぜると、部下も混乱する。
まずは“どっちの問題か”を切り分けるのがスタートライン。
改善計画書と面談記録を残す
法的に最も重要なのが、“改善努力を尽くした”記録です。
これは後で「合理的な理由」として証明できる唯一の防衛線になります。
改善計画書(PIP:Performance Improvement Plan)に記載すべき内容
- 改善目標(例:納期遵守率を90%→100%へ)
- 期限(例:1ヶ月単位×最大3回まで)
- 指導内容(OJT、週次レビュー、教育支援など)
- 双方の署名(本人・上司・人事)
- コメント欄(本人の自覚や意見を残す)
面談記録のポイント
- 日時・参加者・内容・本人の反応を簡潔に残す
- 「感想」ではなく「事実」と「次回アクション」を明文化
- 改善の兆しがあれば、ポジティブな記述も残す
これを3サイクル(6〜8週間)運用しても改善が見られない場合、
「合理的な指導を尽くした」として、退職勧奨(勧める)や配置転換の判断が正当化されやすくなります。



“冷たい対応”に見えるかもしれない。でも、記録は誠実さの証。
感情で動かず、紙で残すのが上司の覚悟だ。
会社全体で判断を共有する(独断はNG)
「上司の判断で辞めさせた」は、もっとも危険なフレーズです。
退職・解雇の判断は“組織決定”でなければならない。
共有すべき相手は、最低限以下の通り:
- 人事部門:記録の整合性・法的リスク・再配置案の検討
- 上位管理職:判断の妥当性・チーム影響の確認
- 法務/顧問弁護士(必要時):文書表現・合意書作成の確認
このプロセスを飛ばすと、「個人の感情で辞めさせた」と見なされ、
労働審判・訴訟では会社側が一気に不利になります。
また、退職後の引き継ぎや後任不在(関連KW:退職 引き継ぎ 後任 いない)にも備えて、
引き継ぎ計画書を社内共有しておくことで、「混乱を生まないマネジメント」として評価を守れます。



“決断”は1人でできても、“判断”はチームでやる。
人事・法務を巻き込むほど、あなた自身の安全も高まる。
退職理由を「能力不足」と伝える際の安全な言い回し例
「あなたの能力不足です」と伝えると、人格否定・ハラスメント・不当解雇の誤解を生みます。
重要なのは、“能力”を客観的な事実と期間の中で整理し、「役割とのミスマッチ」として伝えることです。
NG例
- 「あなたには能力が足りません」
- 「成果を出せないのは努力不足です」
→ 感情的・主観的・争点化リスク高
OK例(安全な言い回し)
- 「今回の職務では、求められる基準と現状の成果との間に差がありました」
- 「改善の機会を複数回設けましたが、基準達成が難しい状況でした」
- 「今後のキャリアを考えるうえで、より得意を活かせる環境を選ぶ選択もあります」
また、退職理由を文書に残す際は、“スキルの方向性”に言及する形が安全です。
文書例
貴殿のこれまでの努力を確認し、複数回の面談を経て改善の機会を設けましたが、
現職務の求める基準到達は困難との判断に至りました。
ご本人の意向を尊重し、今後のキャリアにおいてより適正な職務を検討されることを推奨いたします。



“能力不足”はレッテルではなく、方向性の再提案。
言葉一つで、“冷たさ”にも“誠実さ”にも変わる。
やる気のない社員を放置するとどうなるか
“放置”は優しさではありません。組織にとっては緩やかな崩壊の始まりで、当人にとってもキャリアの劣化を加速させる選択です。ここでは、放置が生む負の連鎖を4つの視点で可視化します。
組織のモラル低下と優秀層の離脱
放置が続くと、基準が下がり、挑戦と学習が止まります。やる気のない社員の行動が“許される前例”になると、頑張る人ほど不公平感を抱き、静かに去る。いわゆる「やる気のない社員 末路」は当人だけの話に見えて、実は優秀層の末路を決める引き金でもあります。
可視化のための指標例
- 再作業率、期限前24時間の突発依頼数
- レビュー待ち滞留時間、朝会での発言者偏在率
- 退職面談での“不公平感”言及率



人は“基準”で働く。基準が下がれば、真っ先に出て行くのは“基準を守る人”だよ。
放置は“周囲の負担増”という形で跳ね返る
働かない人の特徴は、仕事の未完了を周囲の善意で回収させること。結果、できるメンバーにしわ寄せが集中し、燃え尽きが発生します。短期は回るが、中長期では総生産が落ちる“見えない赤字”です。仕事しない人 因果応報は、結局チーム全体の疲弊として返ってきます。
現場での対処の型
- タスクをWBS化し、未完了の影響範囲を見える化
- 代替実施の際は必ず負荷記録を残し、評価に反映
- 緊急代行は一度まで。二度目は「優先度再編」会議を即開催



助け合いは尊い。でも“無限肩代わり”は構造の欠陥。記録して、配分を正そう。
問題社員を守る文化がチームを腐らせる
「衝突を避けるために目をつむる」「長年いるから注意しづらい」——この空気が最悪です。問題社員を守る文化は、真面目なメンバーに“努力しても報われない”学習を与え、サイレントモードの離職を生みます。働かない人 特徴を“個人問題”に閉じず、制度と評価軸で是正する必要があります。
是正の実務
- 評価指標に「コラボ貢献」「ナレッジ化」などの再現性軸を追加
- 役割定義に“やらないこと”を明記し、逸脱は減点対象に
- 行動規範違反は、リマインド→文書指導→評価反映の順で一貫対応



優しさと甘さは違う。守るべきは“人”でなく“基準”。基準が人を守るんだ。
リーダーが取るべき“線引きと覚悟”
線引きは冷たさではなく、公平の宣言です。放置をやめるために、リーダーは次の覚悟を持つ必要があります。
線引きの手順
- 基準の再提示:品質・期限・共有頻度・やらないこと
- 改善の機会:2〜4週間スプリントで検証、支援は記録
- 配置転換の提案:強みが活きる場の再探索
- なお難しければ“選択肢の提示”:円満退職の支援まで含め誠実に
覚悟の言葉例
- 「助けることと、甘やかすことは違う。私たちは前者を選ぶ」
- 「基準を守る人が損をしないチームにする。そのための決断をする」



線を引くのは、誰かを切るためじゃない。“頑張る人が報われる場所”を守るためだ。
まとめ
「クビにしたい社員」と感じたときこそ、リーダーとしての成熟度が問われます。
その感情の裏には、“チームを守りたい”という正義感もあるでしょう。
しかし、感情的な判断は自分を追い込み、チームをさらに壊す結果を招きます。
まずは、記録で事実を整理し、対話で意図を伝え、構造で問題を正す。
「辞めさせる」ではなく「整える」その視点を持てる上司こそ、
最終的に信頼され、評価される人です。
冷静に、誠実に、そして公平に。
それが、“クビにしたい”という瞬間を「成長の分岐点」に変える唯一の方法です。
よくある質問
- やる気のない社員をクビにできますか?
-
即座に解雇するのは原則NGです。
日本の労働法では、「改善の機会を与えた上で合理的な理由がある」ことが必要です。
教育・面談・改善計画を経た上で、それでも変化が見られない場合にのみ、配置転換や退職勧奨が検討対象になります。
“感情”ではなく“記録とプロセス”が判断基準です。 - 能力不足を理由に退職を勧めるのは違法?
-
違法ではありませんが、伝え方に注意が必要です。
「あなたは能力不足」と断定せず、「職務要件と現状に差がある」「別の環境のほうが力を発揮できる」など、ミスマッチの説明として伝えることが重要です。
指導履歴や合意記録が残っていれば、法的トラブルのリスクは下がります。 - 問題社員を追い込む正しい方法は?
-
「追い込む」という発想自体が危険です。
圧力的な指導や退職強要はパワハラに該当する可能性があります。
正しい手順は、①改善計画の提示→②定期面談→③配置転換→④最終判断。
追い込むのではなく、“選択肢を提示して納得を引き出す”のが安全で誠実な方法です。 - 辞めさせ屋に頼むのはアリ?
-
おすすめしません。
「辞めさせ屋」は本人を心理的に追い詰める手法が多く、脅迫・プライバシー侵害など違法行為に発展するケースがあります。
発覚すれば会社側が訴えられ、社会的信用を失うリスクも高いです。
外部に頼るより、人事・法務・弁護士との連携で正しい対応を進めるべきです。 - やる気のない社員を再生させる方法は?
-
多くの場合、やる気の欠如は「方向性のズレ」や「承認の欠如」から生じます。
責めるより、“何が得意か・何に興味があるか”を再確認する対話が有効です。
小さな成功体験と適切な役割設計で、意欲を取り戻す人も少なくありません。
見限る前に、一度“ズレ”を見つめ直してみましょう。
